持続可能なまちづくりと公共交通、松本市民環境大学学習会
掲載日:2009年2月11日
松本市民環境大学の学習会がありました。
松本の公共交通を考えるために、持続可能な都市の考え方を、土地利用と公共交通の緊密な連携から考えてみようというテーマでした。長岡技術科学大学教授で都市計画が専門の中出文平氏が話されました。
中出氏は、次のように話されました。
まず持続可能な都市づくりには、公共交通が果たす役割が大きく、松本市も都市計画マスタープランをつくり、議論している。
松本市は現在中心市街地が空洞化している。そして周辺に無秩序に広がってきてしまっている。これではいけないので、周辺も拠点地域をつくり、拠点同士、また拠点と中心市街地と結ぶ公共交通をつくり、さらにその周りにある農村集落も公共交通で結んでいきたいというのが、松本市の集約型市街地構想の考え方だ。
そもそも都市計画法は、昭和43年にできた法律で、乱開発を防ぐためにできた法律で、市街化区域と市街化調整区域を区分し、不適当な土地の開発を規制するためのもので、本来ならこれを守っていればよかったが、特に地方都市は、車社会の広がりによって、守られなくなってしまった。
これからは、人間の活動する空間だけを視野に入れるのではなく、自然環境も含めて計画することが目標になる。巨大に膨れ上がった都市システムを自然の生態系と共生する空間としてつくり直す必要がある。首都圏では巨大になりすぎて難しいが、地方都市ではまだつくり直すことが可能だ。
市街地の拡大状況を見てみると、明治期と1970年の高度成長期では市街地は変わっていない。ところが、モータリゼーションにより、道が造られ、20年の間に市街地が広がってしまった。一方で、市街化区域のにすむ人口密度は低くなっている。
このような現状からして、都市的土地利用と農業的土地利用・自然的土地利用との望ましい関係が、地方都市の課題になっている。地方都市に必要な将来像は、「コンパクトな都市」が目標であり、質の高い生活空間と都市の魅力の享受、生活のしやすさがキーワードで、かつ持続可能であることを目指すべきである。
持続可能な発展とは、自分の世代だけでなく、将来の世代にとってのニーズを充たす可能性を損なうことなく、現在のニーズにも応じる発展である。
持続可能性と合致する都市計画のアプローチは、コンパクトシティ、歩いて暮らせるまちづくりだ。
コンパクトというのは、小さくするという意味ではなく、メリハリのあるまちづくりをし、そこを公共交通で結んでいくというもの。
公共交通、歩行者路、自転車道を体系的に整備すべきで、歩行距離内で日常生活の活動が行えるようにするべきである。
TOD(公共交通指向型開発)という考え方は、公共交通の駅を中心に公共交通の利用を前提としたコンパクトな開発をすること。
都市、地区中心、住区中心、生活中心というように、大きさのちがう中心を、それぞれに合った公共交通で結んでいく方法がよい。
フライブルグでは、LRT路線を整備し、その新設と住宅開発を一体的に進めた。
富山市では、徒歩と公共交通により生活の実現、お団子(居住区)と串(公共交通)の都市構造とめざすことにした。都心以外に13の地域生活拠点を設定し、道路をつぶしてLRT(路面電車)を造っていく、LRTと地域生活拠点はバスで結ぶ、公共交通沿線での居住を推進することで、20年後には人口の40%が公共交通を利用して生活できるようにするとしている。
上越市は、便利で使いやすい公共交通を目指し、地区間輸送は電車やバス、地区内輸送は循環バスや乗り合いタクシーというようにメリハリの効いた路線設定を考えている。駅や交通拠点をさとの駅として地域の拠点にしよううとしている。ここを生活拠点とし、それを公共交通で結ぶという総合計だ。
土地利用計画からのアプローチとしては、雇用を都市に集積させる、明確な公共交通軸を位置づける、その上で、土地利用が公共交通に貢献するようにする。
公共交通サービスのために推奨される居住密度があり、haあたり100人ぐらいの密度が望ましい。それには、公共交通軸に沿って市街地を形成させることが、重要だ。
では、松本市はどうか?松本市はかなり合格点に近い土地利用がなされてきている。鉄道に沿って市街地が構成されている。これにある程度のバスルート(1日10本とかではまずいが)をのせていけば、公共交通を軸としたコンパクトなまちに再生できる可能性が大きい。
(質問)安曇野市からきたが、まちづくり条例と都市計画法はどちらがよいか?
(答え)まちづくり条例は、運用をきちんとすればよいものになる、都市計画法は全国をカバーし大きな都市を視野に入れて最低限なものをカバーするものなので、本当によいまちづくりをしようとするなら、まちづくり条例の方が良い。
穂高のまちづくり条例は、乱開発が終わった後でつくったもので、上手くいかなかったが、しかし条例がなかったらもっと乱開発が進んでいたはず。松川村は穂高をみて、乱開発が行われる前にもっと厳しい条例(たとえば、農地をつぶしたら、別なところに農地を作れなど)をつくったが、厳しい条例であったために5年で見直すことを約束されられてしまった。どんなに良い条例ができても、それをどう運用するかが、大事だ。
(質問)県の役割は?
(答え)県は地域のことはわからないので、全体の調整をきっちりすることが県の役目。基本的には市町村が独自に行うことなので、知事が30度くらいの幅のなかで一定の方向(ベクトル)を示すマニュフェストをつくり、広域で調整を行う必要がある。松本圏域、あるいは、諏訪と一緒になど、10の圏域ではなく、広域を2、3にまとめた中で、全体の調整を担うことが大事だ。
(質問)都市計画審議会に住民が入る必要があると思うがどうか?また、都市計画を進めるための首長の役割は?
(答え)住民が都計審に入っているところは結構ある。松本は市民が入っていないのなら、オンブズマン活動などを通して、市民が行政に言っていくべき。
市民が選んだ首長なのだから、ある程度はリーダシップをとって進めるべきだ。
いずれにしても、市民がしっかりしないといけない。
(質問)松本ではアルピコの経営問題でバス路線が衰退しつつあるが、利用者が少ないのも衰退の原因ではないか。
(答え)それは、松本に限ったことではない。自家用車ではなく公共交通を出来るだけ利用しようという住民の意識が必要だ。個人的にはガソリンが300円/Lぐらいになれば、良いと思う。そうすれば公共交通を利用した方が得になる。
持続可能なまちづくりには、公共交通を組み込んだ土地利用をしっかり行い、それを支持しようとする市民の高い意識が必要があることが良くわかりました。
