土は生命のみなもと、生ゴミと農村で循環するまちづくり
掲載日:2010年2月8日
今日は松本大学で「土・農業・生命の循環から”食”を考えるというシンポジウムがありました。午前中はレインボープラン推進協議会会長の管野芳秀氏の「生ごみはよみがえる〜土をめぐる生命の循環〜」という基調講演、午後からはパネルディスカッションが行われました。
ーーーー
菅野氏は、山形県長井市で「まちの市民が堆肥原料である生ごみの分別という役割を通じて、農業の土づくりに参加し、農家は単なる食材の生産者ではなく、まちの台所の食生活を守る役割を担う」という堆肥を通した作物の生産者と消費者の循環的な関係性をとりもどす活動、「レインボープラン」を進めてきた方です。
このシンポジウムは、松本大学の管理栄養士を目指す学生たちと一緒の公開講座でした。菅野さんは「今、私たちは一年間に赤ちゃんの体重ほどの添加物をとりこんでいる」ということを、管理栄養士を目指すみなさんには知っていただきたいと話されました。以下、菅野氏の話。
ーーーーーー
管野さんたちは、生ごみ、籾、蓄糞2000tの原料から堆肥を生産していて、100%の市民が参加し、村の畑に還っている。地域の中で生ごみ・健康野菜が絶えず循環しているこの仕組みは、市民主導で行政を巻き込んでつくっていったもの。
台所ででた生ごみは水を切るかごに入れておき(水が多きと腐る)、週2回収集所に出す。異物が混ざらないような収集のシステムを作った。生ごみの分別は、12年間やっているが、週間になって普通にできている。淡々ときれいな分別は、単に分別することではなく、意識の変化をもたらしている。ちなみに、4000世帯から出される生ごみに混じっている異物は、年間でたったの40kg。
このようにして、まちが村の、村がまちの、、、みんなが役割を持ちながら土・農・食に関わることで、「地域が誇り」という市民意識が生まれた。
ーーーー
今は、土が変わってきてしまっている。昔の野菜のようなビタミンやミネラルが今の野菜には含まれていない。
たとえば、1954年と2001年の食品成分表に見られるピーマンの分析では、ビタミンAを、昔のピーマン1個分とるなら、今のピーマンでは18個分食べないといけなくなっている。同様に、ビタミンB1、B2、Cでも、1、5〜3倍分食べないといけなくなっている。18歳までに何を体に取り入れたかで、その人の一生の健康が決まる。
この成分の違いは、1954年には堆肥で野菜を作ってきたのに対して、2001年には化学肥料と農薬でつくっているため、土がだめになってしまった。
昔は家畜を飼い、その糞を堆肥にして土を豊かにしてきた。しかし今は豚や牛を飼っている地域は少なくなり、長井市も同じ。肉はほとんど海外から枝肉でくる、家畜の糞がない、何を原料に土を豊かにするか?と考えたときに、人間の糞に注目したが、これは安全基準を越える水銀がでるため使えないことがわかった。そこで、生ごみを使って市民と農家で堆肥をつくろうということを考え、仕組みづくりに8年、堆肥センターが稼働して12年やってきた。
これは、3人ぐらいの生ごみを使ってまちづくりをしたいという菅野さんたち市民の情熱から始まった。市民から、女性団体、商工会議所、病院、清掃事業所、行政、JAと広がって行き実現した。5年間で300回の会議をやった。
「願い」を持って訴えていくことが大事で、しっかり願えば不可能はない!
ーーーー
土は命の源。土は岩でも砂で粘土なく、今まで生きてきたものの遺体の集合体が土。森が600〜1000年もかかってつくってきたのが土。循環でつくられたのが土で、循環を取り戻すのが、環境を守ることだ。地球も人間も動物も植物も循環の中で生きている。
膨大な命の集合体が土を作り、大根を育んでいる。土は今だけでなく、過去から未来につなぐ資源だ。50年後の赤ちゃん、これから生まれてくるすべての生き物は土の中にあると言える。土は命、私達は土を毎日食べている。土の健康を守ることをまちの公共事業として取り組むことこそ、本当に大事なこと。
土の汚れは、食べる人間の体を汚染し、弱い体にしてしまう。土を食べるという観点から考えてみたら安いからといって、輸入の野菜は食べられないはず。地域の農業と地域社会(台所)のつながり、循環がとても大事なことだ。これをまわしていくのは、思いやりと優しさ。
ジャーナリストの大野氏は「レインボープランは、時代の最先端だ。コンクリートや弱いものいじめ、自己責任という言葉にウンザリしてきたこの時代、レインボープランはそうでない社会を示している」と、話している。
ーーーー
最後に、学生のみなさんに菅野氏は「夢を実現するには、
1、自分のしたいことを頭に刻み込み、それに惚れる。
2、誠実に生きる。他人に対して説得力がもてる。
3、個人的利益は一番最後に回す。
4、笑顔にのせてやる。
ことです。」と話されました。
ーーーーーーーー
午後からはパネルディスカッションで、はじめに松本のくれき野生産組合の方が話されました。
後継者育成のために、みんなで大型機械を購入して生産を始めたことがきっかけ。安全・安心・生き物にやさしい有機農業を目指しているそうです。最近では、産直「くれき野ブランド」を立ち上げ、味噌や醤油をつくって販売しています。地域の中学校の生徒たちと、有機栽培で米づくりをしたり、あいた畑にコスモスの種をまき、コスモス祭りも行って、若い人たちとの交流も行っています。
ーーーー
農協で化学肥料や農薬打ってきた方もくれきの生産組合にはいますが、今は有機農業を行っています。
この方は、肥料の話をされました。
化学肥料の原料は全部海外から輸入しているため、最近では海外でも化学肥料が使われるようになったり、原油価格が上がってきていて、化学肥料の原料の値段も上がりつつあります。
肥料価格が上がっていった場合、日本の農業が保つのか?という心配がある。したがって、地域で生ごみや学校給食残さを堆肥にすることは、大事だと話されました。
次に筑北村聖南中の栄養教諭さんが話されました。長野県が採用した栄養教諭の一人です。食育はおいしい給食から始まる、それを基本にしているそうです。。
ーーーー
くれき野生産組合は、困ったもの同士の集まりで、全員で積極的に参加しているそうです。補助金などはいっさい貰わずに中古の機械を買って始めました。耕作されなくなった田畑を定年後に買って農業を始めた人もいたりするそうです。兼業農家が基本で、みんなで支え合うことによって、地域農業の荒廃をなくし、顔の見える栄養価の高い野菜を生産し、地域の方々に食べていただくことで、地域で循環する農業が、地域を健康に、子どもを健康に、身体を健康にする源になるという思いでやっていると話されました。パネルデュしカッションのコーディネーターの松本大学総合経営学部教授の白戸洋先生は、くれき野生産組合は「地域を耕している」と話されました。
菅野さんは、学生たちに向かって、人生の目的は地位やお金を得ることではなく、「如何に生きるか」であり、目先の利益ではなく、生き方、社会の参加の仕方にこだわってほしいと、話されました。
ーーーー
質問タイムには、連作障害についての質問がありました。
大量生産ではある作物が育つために特定の栄養素だけが無くなってしまうため、化学肥料を使っているが、はじめから堆肥を使うこと、また、例えばトマトなら実だけいただき、茎は畑に戻すことによって、連作障害は起こらないとくれき野生産組合の方が答えました。。
ーーーー
白戸先生は今日のパネラーのみなさんは、行政にやって貰うのではなく、自分たちから始めた、自立ということが大事だと話されました。自分が行動して人に伝えていくこと。地域は人が居て集まって地域ができてくる、自分が行動することで、地域ができてくると話されました。
最後にパネラーのみなさんに、白戸先生が「明日からの夢は?」と尋ねました。
栄養教諭さんは、「極度の偏食の子やアレルギーの子などに、どういう手だてを持って自分の将来のために健康な体をつくるか、その大切さを伝えたい」と話されました。
くれき野生産組合の方は、「近くに直売所をつくる予定だが、我々が作った米のおにぎりと、小麦でつくるうどんを売ってみたい。福祉のコミュニティー施設を、近くに我々の手でつくってみたい」と話されました。
菅野さんは、「地域が変わり日本が変わるという道筋を信じているので、レインボープランを通じて、日本に貢献したい、農民の側からそういう立場で関わっていきたい」と話されました。

